州政府が本格的に取り組み開始
オーストラリアのニューサウスウェールズ州(NSW)では、5年以内に支援を必要とする人々が劇的に増加するとの見通しに対し、障害者向けサービス部門や地域支援機関で働くスタッフの数が圧倒的に足りないという状況に直面している。
全国障害者サービス協会によると、2014年までには現在より多くの職務に空きが出る見通しで、そうなるとサービスを必要とする人々は対応待ちのリストに名前だけ連ね、実際の介護や支援は家族が行うことになる。
州政府も野党も、協会の見立ては高齢者の増加に伴って障害者支援のニーズが伸びることを視野に入れた数字だという認識を示している。
将来的な見通し
NSWでは2008年から2009年にかけて、約28万2,000人の人が地域支援サービスか障害者支援サービスのいずれかを受けている。この数字は2014年までに、26%増の約35万6,500人まで増加すると言われている。
現在は33,500人が従業員として支援業務にあたっているが、フルタイムとパートタイムを合わせて38,165人が2014年までに採用すべき人数と見積もられている。この数字は、宿泊型の高齢者介護業務は含まないものである。
NSWの高齢者および障害者支援問題担当大臣、ポール・リンチ氏は14日、13億豪ドル(約1,040億円)をかけて障害者支援のサービス向上を2006年から2016年にかけて行う州政府の計画に触れ、「計画を進めることの必要性を認識している」と語った。リンチ氏は15日にシドニーで300人以上の部門関係者を招集して協議会を開催し、この「前代未聞の(支援対象者の)増加問題」に取り組むとみられる。
野党の反応は冷ややか
だが野党の障害者サービス広報担当者は、州政府の対応をこう酷評する。
「障害のある成人を子どもに持つ80代の人は、その子どもがホームレスであるか、病院や介護施設に放り込まないと州政府の支援を受けられないことになる。そんなおかしなことがあってなるものか。もし働き手を求める明確な要請が州政府に対してあったとしても、どこの地域でも働き手を求めているということにはならないだろう。」
また前述の広報担当者は、宿泊型支援施設についても、2008年は1771件の申し込みに対して64件しか承認されず、需要が供給を上回っていると語っている。一方担当大臣のリンチ氏は、州政府は990箇所の支援施設に対して出資を行ったとしている。
従業員不足の問題に取り組むために州政府は430万豪ドル(約3億4,400万円)を支援業務員募集キャンペーンに費やし、その結果約二週間で800人もの応募者を集めた。
だが結局は、雇用の創出はサービスを提供する個々の支援者次第だと全国障害者サービスのNSW州担当者、パトリック・マーヘル氏は語る。
ある22歳の支援女性の場合、支援施設で受け持つ患者はほとんどが脳性麻痺で車椅子から立つこともできず、食事も点滴による栄養注入が行われている。女性は今の仕事をむしろ割のいい仕事だと感じているという。
(編集部 小川優子)
Disability worker shortage to worsen